産業衛生学雑誌
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原著
内視鏡消毒剤オルト・フタルアルデヒドによる健康障害とその対策
藤田 浩沢田 泰之小川 真規圓藤 陽子
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2007 年 49 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

内視鏡消毒剤オルト・フタルアルデヒドによる健康障害とその対策:藤田 浩ほか.東京都立墨東病院輸血科―近年,内視鏡殺菌のためのグルタルアルデヒド(GA)の代替品としてオルト・フタルアルデヒド(OPA)の使用が増加している.我々は,内視鏡検査室に従事している医療従事者において,気管支喘息と接触皮膚炎の発症を見た.そこで,我々は定期外健康診断と作業環境測定を実施し,アレルギー疾患に対する予防的な対策を講じた.70名の当該医療従事者のうち17名が,皮膚,呼吸器または眼症状を経験していた.接触皮膚炎は4人の労働者に見られ,そのうちの1人は喘息も合併していた.内視鏡洗浄室のOPA濃度は0.06~2.01ppbであった.最もOPA濃度が高いのは内視鏡検査器具を浸漬するためのバケツの蓋が開いている時だった.その後,我々は内視鏡備品の浸漬洗浄を止め,各従事者に個人防護具を装着させ,自動洗浄機に局所排気装置を設置し,従事者に対して衛生教育を実施した.翌年の定期健康診断で,83名のうちの2名が軽度の眼刺激を訴えたが,接触皮膚炎ならびに気管支喘息の新規発症はなかった.本報告は,非常に低いOPA濃度にもかかわらず,皮膚および気道症状が起こったことを明らかにした.GAの代替品としてOPAが広く使われることは重大な健康影響の危険性を孕んでいる.健康障害を予防するためには,個人保護具の装着と局所排気装置をつけた自動洗浄機が必要である.
(産衛誌2007; 49: 1-8)

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